漫画のトーンの使い方|番号の読み方・貼る場所の優先順位とモアレを防ぐ設定
トーンを貼っても垢抜けない原因は枚数ではなく、線数と濃度が揃っていないことです。61番=60線10%という番号の読み方、最初に揃える3枚、貼らない場所の決め方、600dpi・60線・45度という入稿の基準、モアレの3つの原因と対策まで、入稿前チェックリストつきでまとめました。
トーンを貼ったのに原稿が垢抜けない原因は、枚数ではなく「線数と濃度が揃っていないこと」です。種類をたくさん持っていても、選ぶ基準がないまま貼ると、画面がにごって見えます。
この記事では、トーン番号の読み方、どこに貼るかの優先順位、そして印刷でモアレを出さないための設定をまとめます。何十種類も揃える必要はありません。実際に使うのは数枚です。
先に要点です。
- 番号は「線数」と「濃度」を表している:61番なら60線・10%。これが読めれば選べます
- 最初に揃えるのは3枚でいい:影用・中間用・背景用。増やすのは足りないと感じてからです
- 印刷に出すなら60線以下が無難:同人誌印刷所の多くが60線以下を推奨しています
仕上げの前段である作画そのものは漫画のコマを作画するAIプロンプト集にまとめています。
※2026年10月27日時点の情報です。印刷の推奨値は印刷所によって異なります。入稿前に必ず利用先の公開している原稿規定をご確認ください。ソフトの機能名や操作手順はバージョンによって変わることがあります。
トーンとは何か
スクリーントーンは、小さな点(網点)の大きさと密度で、白と黒の間の「灰色」を作るためのものです。モノクロ印刷では中間の灰色をそのまま刷れないため、点の大小に置き換えて濃さを表現します。
遠目には灰色に見えますが、拡大すると点の集まりであることが分かります。この仕組みを理解しておくと、後述するモアレの原因もすぐに腑に落ちます。
もともとはアナログ原稿に貼る粘着シートでしたが、現在はデジタルで網点を生成するのが主流です。ただし線数・濃度という考え方はデジタルでもそのまま残っています。番号の読み方を覚える価値があるのはそのためです。
番号の読み方:線数と濃度
トーンの製品番号は、ほとんどのメーカーが線数と濃度を基準に付けています。たとえば「61番」は、次の意味です。
| 項目 | 意味 | 61番の場合 |
|---|---|---|
| 線数(L / lpi) | 1インチ(25.4mm)の間に点が何列並ぶか。数字が大きいほど点が細かい | 60線 |
| 濃度(%) | 1インチ四方のうち、黒い部分が占める面積の割合。数字が大きいほど濃い | 10% |
つまり61番=60線10%。キャラクターの影に使う定番として、最も広く使われているトーンです。
メーカーによって「SE-61」「IC S-61」のように記号が付きますが、数字の部分の読み方は共通です。線数が同じなら、末尾の数字が濃度だと考えて差し支えありません。
代表的な組み合わせを並べると、使い分けのイメージがつかめます。
| 番号 | 線数・濃度 | 見え方と用途 |
|---|---|---|
| 61 | 60線10% | 最も薄い実用濃度。肌の影、髪のツヤ、しわ |
| 62 | 60線20% | やや濃い影。服の陰、影の中の暗部 |
| 63 | 60線30% | 中間色の服、遠景の建物 |
| 65 | 60線50% | かなり濃い。ベタの手前として使う |
末尾の数字がそのまま濃度の10の位になっているのが分かります。この並びを覚えておけば、番号だけで濃さが予想できます。
トーンの種類一覧
線数と濃度で表される「網トーン」以外にも、いくつか種類があります。
| 種類 | 見た目 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 網トーン(アミ) | 均一な点 | 影、服、遠景。最も使用頻度が高い |
| グラデーショントーン | 濃淡が連続して変化 | 空、感情の演出、コマの奥行き |
| 万線トーン | 平行な線 | 速度感、緊張、背景の抽象表現 |
| 柄トーン | 花、星、ハート、幾何学模様 | 感情表現、少女漫画の背景 |
| 背景トーン | 街並み、空、草原などの絵 | 背景の時短。作画コストを大きく下げられます |
| ホワイトトーン | 白い点 | 黒地の上に乗せて、質感や光を表現 |
初心者が買いすぎるのは柄トーンと背景トーンです。どちらも「使いどころが限定される」種類なので、必要な場面に出会ってから足すほうが無駄がありません。
最初に揃えるのは3枚でいい
実際に多用するのは次の3種類です。
| 役割 | 目安 | 使う場所 |
|---|---|---|
| 影用(薄い) | 60線10%前後 | キャラの肌の影、髪のツヤ、服のしわ。いちばん出番が多い |
| 中間(やや濃い) | 60線20〜30% | 濃い色の服、影の中のさらに暗い部分、重ねて段差を作るとき |
| 背景・空気感 | グラデーショントーン | 空、感情の演出、コマの奥行き |
この3枚で8割の場面がまかなえます。種類を増やすより、同じ3枚を最後まで使い切るほうが、作品全体の統一感は上がります。
どこに貼るか:優先順位
トーンは「全部に貼る」ものではありません。貼らない場所を決めるほうが、画面は整理されます。
優先順位は次のとおりです。
- 1. キャラクターの影:立体感が出て、キャラが背景から浮き上がります。ここだけでも印象が大きく変わります
- 2. 濃い色の服や髪:キャラ同士の見分けがつきやすくなります
- 3. 背景の遠景:手前と奥の距離感が出ます
- 4. 感情・演出:集中線やグラデーションと組み合わせます
逆に、主人公の顔まわりと、読者に見せたい一点には貼らないのが原則です。白く抜けている場所に視線が集まります。すべてに貼ると、どこを見ればいいのか分からない画面になります。
影を貼るときは、1コマごとに光の来る方向を先に決めてください。光源を決めずに貼ると、影の形が不自然になり、どれだけ丁寧に貼っても立体に見えません。
ベタとトーンの使い分け
ベタ(真っ黒に塗る)とトーンは、どちらも「暗さ」を表しますが役割が違います。
| ベタ | トーン | |
|---|---|---|
| 表すもの | 形そのもの、強いコントラスト | 中間の濃さ、質感 |
| 向く場所 | 髪、スーツ、影の落ちた背景、夜 | 肌の影、しわ、遠景、空 |
| 多用したとき | 画面が重くなるが、締まる | 画面がにごる。締まりがなくなる |
| 修正のしやすさ | 消すのが大変 | 剥がす・貼り直すが容易 |
迷ったらベタを先に決めてください。ベタで画面の骨格を作り、その間を埋めるようにトーンを置くと、濃さの段階が自然に整理されます。トーンから始めると、全体が同じような灰色になりがちです。
仕上げの順番としてはベタ → トーン → 削り・ホワイトが基本です。この順番を守るだけで、作業のやり直しが大きく減ります。
削りとホワイトで質感を出す
トーンは貼って終わりではありません。削ることで質感が生まれます。
- ぼかし削り:影の境目を削ってなじませる。肌や柔らかいものに向きます
- 線削り:平行に細く削る。金属の反射、ガラス、水面
- ランダム削り:不規則に削る。土、布の質感、古びた壁
- ホワイト:白で描き足す。髪のツヤ、目のハイライト、光の粒
デジタルでは消しゴムや透明色で同じことができます。削りを入れるだけで、同じトーンでも手数をかけた印象になります。特に髪のツヤは、トーンを貼ってから白で削るだけで一段きれいに見えます。
重ね貼りとモアレ
モアレは、印刷物に意図しない縞模様やざらつきが現れる現象です。トーンの点と点が干渉して起きます。主な原因は3つです。
| 原因 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 解像度が合っていない | 600dpi以外で作業すると点が割り切れず干渉する | モノクロ原稿は600dpi以上で作業する |
| 線数や角度の違うトーンを重ねた | 2層の点がずれて縞模様になる | 重ねるトーンは線数と角度を揃える |
| 細かいトーンを回転・変形させた | 角度が変わって元の層と干渉する | 60線以上のトーンは回転させない |
重ね貼りで濃さを作りたい場合は、同じ線数・同じ角度のトーンを重ねるか、最初から濃いトーンを1枚貼るほうが安全です。10%を2枚重ねるより、20%を1枚貼ったほうが確実にきれいに出ます。
なお、モアレは画面上では見えないことがあります。縮小表示では消えて、印刷で初めて現れることも珍しくありません。不安な場合は原寸表示で確認するか、テスト印刷をしてください。
印刷に出すときの設定
画面上できれいに見えていても、印刷するとつぶれることがあります。同人誌印刷所が公開している原稿規定を見ると、おおむね次の範囲に収まります。
- 解像度:モノクロ2階調で600〜1200dpi、グレースケールで350〜600dpi、カラーで300〜350dpi
- 網トーンの線数:60線以下を推奨。印刷所によっては80線のデータも受け付けますが、濃度70%を超えるとつぶれやすくなると案内されています
- 網点の角度:45度が標準です
つまり600dpi・60線・45度を基本に置いておけば、ほとんどの印刷所で問題になりません。線数を上げたくなる場面もありますが、画面で見た繊細さは紙の上では再現されないことが多いです。
なお、推奨値は印刷所ごとに異なります。入稿先が決まっている場合は、必ずその印刷所の原稿規定を先に確認してください。規定は各社がWebで公開しています。
アナログとデジタルの違い
| アナログ | デジタル | |
|---|---|---|
| 濃さの変更 | 剥がして貼り直す | 設定値を変えるだけ |
| 削り | カッターやトーンナイフ | 消しゴム・透明色 |
| モアレ | 重ね貼りの角度で発生 | 解像度と角度で発生 |
| コスト | 1枚ごとに購入 | 素材を一度入手すれば再利用可 |
| 失敗のリスク | 貼り直しで原稿が傷む | いつでも取り消せる |
デジタルの最大の利点は「後から濃さを変えられる」ことです。これを活かすなら、次の節の方法が効きます。
デジタルでの貼り方
CLIP STUDIO PAINTでは、トーン素材を貼る方法のほかに、描いたものをそのままトーンに変換する方法があります。
- 素材から貼る:素材パレットのトーンを選択範囲にドラッグします。範囲を作ってから貼るのが基本です
- 描いた部分をトーン化する:レイヤーに灰色で塗ってから、[レイヤープロパティ]パレットで[トーン]をオンにすると、網点に変換されます
- 線数と角度を変える:[レイヤープロパティ]の設定で、線数・角度・網点の形を指定できます。角度の初期値は45度です
後者の「塗ってからトーン化する」方法は、濃さを後から変えられるのが利点です。塗り分けの段階では灰色の濃淡だけ決めておき、仕上げでまとめてトーン化すると、やり直しが楽になります。
作業の流れとしては、次のようになります。
- グレースケールで濃淡だけを塗り分ける(この時点では網点にしない)
- ページ全体を並べて、濃さのバランスを確認する
- 問題なければ、まとめてトーン化する
- 線数・角度・解像度を入稿先の規定に合わせる
グレースケール塗り分けをAIに任せるプロンプト
濃淡の塗り分けは、AIに下地を作らせてから手で整えると早くなります。そのままコピーして使える形で載せます。
影のあたりをつける
この線画に、モノクロ漫画の仕上げを想定したグレースケールの陰影をつけてください。光源は画面左上。濃さは3段階(白/薄いグレー/濃いグレー)に限定し、中間の階調は作らないでください。主人公の顔まわりは白のままにしてください。
濃さのバランスを見てもらう
これは漫画1ページの仕上げ途中です。画面全体で濃さが重すぎる箇所、逆に白が多すぎて寂しい箇所を指摘してください。読者の視線を集めたいのは(ここに対象)です。
トーンの選び方を相談する
モノクロ漫画でトーンを貼ります。次の対象それぞれに、60線で何%のトーンが適切か提案してください。理由も1行で添えてください。重ね貼りは避ける前提でお願いします。
対象:(例)主人公の肌の影/制服のスカート/夕方の空/遠景のビル
やりがちな失敗と直し方
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 画面全体がにごって見える | 全部にトーンを貼っている | 主人公の顔まわりと見せ場を白く抜く |
| 印刷すると縞模様が出る | 解像度か角度の不一致(モアレ) | 600dpiで作業し、重ねるトーンの線数・角度を揃える |
| 濃い部分がベタっとつぶれる | 線数が高すぎる/濃度が高すぎる | 60線以下に下げる。70%超えの濃度は避ける |
| キャラが背景に埋もれる | キャラと背景が同じ濃さ | 背景のトーンを薄くするか、キャラの輪郭側を白く抜く |
| 影の形が不自然 | 光源を決めずに貼っている | 1コマごとに光の来る方向を決めてから貼る |
| ページごとに濃さがバラバラ | 使うトーンを決めていない | 作品の最初に3枚を決め、最後まで同じものを使う |
| 貼ったのに手抜きに見える | 削りを入れていない | 髪のツヤと影の境目だけでも削る |
| 柄トーンが浮く | 柄の主張が強すぎる | 濃度を下げるか、面積を小さくする |
AIに任せられるところ、任せられないところ
| 作業 | AIに任せられるか | 補足 |
|---|---|---|
| 影の位置のあたりをつける | 任せられる | 光源を指定すれば、おおまかな陰影の下地は出せます |
| グレースケールの塗り分け | 任せられる | 塗り分けまでAI、トーン化は自分で設定するのが安全です |
| 濃さのバランスの相談 | 任せられる | 画面を見せて「どこが重いか」を聞く使い方ができます |
| トーン番号の提案 | 任せられる | 対象を列挙すれば候補が出ます。最終判断は自分で |
| 線数・角度の最終設定 | 人が決める | 印刷所の規定に合わせる必要があります |
| どこを白く抜くか | 人が決める | 見せたい一点の判断は、話の内容次第です |
| 削りの入れ方 | 人が決める | 質感の判断は手作業のほうが早いです |
AIで灰色の塗り分けまで済ませ、トーン化と印刷設定は自分で管理する。この分担なら、モアレの事故を避けつつ手数を大きく減らせます。
入稿前チェックリスト
- 解像度は600dpi以上になっているか
- 網トーンの線数は60線以下か
- 網点の角度は45度に揃っているか
- 重ね貼りした箇所で、線数と角度は一致しているか
- 60線以上のトーンを回転・変形させていないか
- 濃度70%を超える広い面がないか
- 主人公の顔まわりは白く抜けているか
- ページを並べたとき、濃さのばらつきがないか
- 入稿先の原稿規定を確認したか
まとめ
トーンで迷ったら、次の順番で確認してください。
- 使うトーンは3枚に絞れているか(影・中間・グラデーション)
- ベタを先に決めたか(トーンから始めると画面がにごります)
- 見せたい一点は白く抜けているか
- 600dpi・60線・45度になっているか(印刷に出す場合)
トーンは枚数を増やすほど上手くなるものではありません。少ない種類を、決めた場所に、同じ設定で貼る。これだけで原稿は見違えます。
仕上げまで終えたら、あとは通しで作る工程です。判断や手数が足りない部分は、AIを相談相手として使いながら進めてみてください。